雨水(うすい)|2月19日〜3月4日頃
空から降るものが雪から雨へと変わり、凍てついた大地がしっとりと緩み始める「雨水」。この季節、自然界では万物が「外」へと向かう準備を始めます。実は、私たちの心もまた、この自然のサイクルと無関係ではありません。
古来より、この雨水の時期に雛人形を飾ると「良縁に恵まれる」と言い伝えられてきました。雛人形にはもともと、身代わりとなって厄を払う「流し雛」の風習があり、水が豊かになるこの時期に飾ることで、清らかな流れとともに新たな縁を呼び込むとされたのです。
石田梅岩は、人の心には「天理」という自然の摂理が備わっていると説きました。「春になれば花を愛で、暖かくなれば外に出たくなるのが人間の自然な心(まこと)である」と考え、その動きを肯定したのです。スモールビジネスの現場でも、ついつい「どう売るか」という手法に走り、冬の固い土を無理に掘り起こそうとしてしまいがちです。しかし、大切なのは、顧客の心が「冬の閉鎖的なモード」から「春の開放的なモード」へどう変化したかを、静かに観察することではないでしょうか。
自らの私心を抑え、相手の心の「うごき」をありのままに見つめること。それもまた、自分を律する「倹約」のひとつの形です。強引な押し売りではなく、雪どけ水が自然と川へ流れ出し、雛が縁を運ぶように、顧客の「やってみたい」という自然な情を引き出せる存在でありたいものです。
雨水が土を潤し、やがて景色を鮮やかに変えていくように。誠実な観察から生まれる商いが、誰かの心を温かく解きほぐし、素晴らしいビジネスのご縁へと繋がっていく。そんな静かで力強い循環のなかに、身を置くことのできる自分でありたいものです。

