黄鶯睍睆|成果が出ない時期に地道な一歩を宝に変える智慧

目次

第2候:立春次候/黄鶯睍睆(うぐいすなく)|2/9〜2/13頃

「梅にウグイス」という美しい情景を思い浮かべる時、私たちの頭には鮮やかな黄緑色の鳥が浮かびがちです。けれど、実際に梅の枝で愛らしく跳ね回るのはメジロであることが多く、本物のウグイスは、驚くほど地味な茶褐色の羽を纏い、人目に触れない藪の中で静かに過ごしています。

さらに、この時期の彼らの鳴き声は、私たちが知るあの見事な「ホーホケキョ」ではありません。冬を越したばかりの喉を震わせ、「ケキョ……ケキョ」「ホーー、ケキョ?」と、どこか心もとなく、たどたどしい練習から始まるのです。

この「ケキョ、ケキョ」という不格好な鳴き声こそが、実はビジネスにおける「勤勉」の本質を物語っています。

新しい企画を立ち上げた時、あるいは不慣れな現場に立つ時。私たちはつい、メジロのような華やかさや、完璧な「ホーホケキョ」を最初から求めてしまいがちです。しかし、自然界のウグイスは、誰に見られることもない藪の中から、何度も、何度も、納得がいくまでその声を磨き続けます。

江戸時代の思想家・石田梅岩は、商いの道において「勤勉」を尊びました。それは単なる重労働ではなく、自らの仕事に誇りを持ち、見えない場所で一歩ずつ質を高めていく「誠実な積み重ね」を指します。スモールビジネスの現場においても、最初から名文が書けなくても、接客が完璧でなくても良いのです。不格好な「ケキョ、ケキョ」という試行錯誤を、恥じることなく、むしろ尊い時間として積み重ねていくこと。その勤勉さこそが、やがてお客様の心に響く「本物の声」へと変わっていきます。

チームの仲間が慣れない仕事に苦戦しているなら、その「練習の音」を温かく見守りたいものです。

今はまだ、冷たい風の吹く藪の中で、途切れ途切れの声かもしれません。けれど、そのひたむきな震えの先にこそ、関わるすべての人に春を報せる、美しい歌声が待っている――そう信じて、今日という日の地道な歩みを慈しんでいきたいものです。

  • URLをコピーしました!
石田梅岩(いしだ ばいがん)とは

1685年〜1744年。江戸時代中期の思想家。石門心学(せきもんしんがく)の開祖。

丹波国(現在の京都府)の農家に生まれ、京都の商家に奉公する。独学で儒教・仏教・神道を学び、45歳で私塾を開講。 「学問とは心を尽くし知を知るためのもの」とし、日常生活における実践道徳を説いた。特に商人の営利活動を「士農工商」の枠組みを超えて肯定し、「正直」「倹約」の重要性を強調。その思想は「先義後利」「三方よし」の源流とも言われ、現代の経営倫理の先駆けとして評価が高い。

庶民に対し平易な言葉で道徳を説く講釈(道話)を行い、性別や身分を問わず広く門徒を集めた。主著に『都鄙問答(とひもんどう)』がある。

2020年6月に創設された、経営者(個人事業主や会社役員を含む)のためのビジネス交流会「梅岩塾」八咫烏支部のサブマネージャーをしています。このような「商売の本質」を一人で考えるだけでなく、現代のビジネスにどう活かすかを共に語り合う場があります。私自身も運営に携わっている「梅岩塾」での活動についても、ぜひ知っていただければ幸いです。どなたでもゲスト参加できます。
Facebookでの連絡大歓迎です→こちらから

この記事を書いた人

甲田 和美のアバター 甲田 和美 代表取締役

株式会社東京コンテンツヒット代表取締役
中小企業や起業家さんが自分で発信できるブログつきのサイトをWordPressで制作しています。

目次