第2候:立春次候/黄鶯睍睆(うぐいすなく)|2/9〜2/13頃
「梅にウグイス」という美しい情景を思い浮かべる時、私たちの頭には鮮やかな黄緑色の鳥が浮かびがちです。けれど、実際に梅の枝で愛らしく跳ね回るのはメジロであることが多く、本物のウグイスは、驚くほど地味な茶褐色の羽を纏い、人目に触れない藪の中で静かに過ごしています。
さらに、この時期の彼らの鳴き声は、私たちが知るあの見事な「ホーホケキョ」ではありません。冬を越したばかりの喉を震わせ、「ケキョ……ケキョ」「ホーー、ケキョ?」と、どこか心もとなく、たどたどしい練習から始まるのです。
この「ケキョ、ケキョ」という不格好な鳴き声こそが、実はビジネスにおける「勤勉」の本質を物語っています。
新しい企画を立ち上げた時、あるいは不慣れな現場に立つ時。私たちはつい、メジロのような華やかさや、完璧な「ホーホケキョ」を最初から求めてしまいがちです。しかし、自然界のウグイスは、誰に見られることもない藪の中から、何度も、何度も、納得がいくまでその声を磨き続けます。
江戸時代の思想家・石田梅岩は、商いの道において「勤勉」を尊びました。それは単なる重労働ではなく、自らの仕事に誇りを持ち、見えない場所で一歩ずつ質を高めていく「誠実な積み重ね」を指します。スモールビジネスの現場においても、最初から名文が書けなくても、接客が完璧でなくても良いのです。不格好な「ケキョ、ケキョ」という試行錯誤を、恥じることなく、むしろ尊い時間として積み重ねていくこと。その勤勉さこそが、やがてお客様の心に響く「本物の声」へと変わっていきます。
チームの仲間が慣れない仕事に苦戦しているなら、その「練習の音」を温かく見守りたいものです。
今はまだ、冷たい風の吹く藪の中で、途切れ途切れの声かもしれません。けれど、そのひたむきな震えの先にこそ、関わるすべての人に春を報せる、美しい歌声が待っている――そう信じて、今日という日の地道な歩みを慈しんでいきたいものです。

