第8候:啓蟄次候/桃始笑|3月10日〜3月14日頃
暦の上では、桃のつぼみが少しずつほころび始める「桃始笑(ももはじめてわらう)」の頃を迎えました。昔の言葉で、花が咲くことを「笑う」と表現するのは、なんとも奥ゆかしく、春の訪れに対する喜びが伝わってくるようです。厳しい冬を越え、ふっくらと膨らんだつぼみが緩む様子は、人の心が解きほぐされる瞬間にどこか似ています。
私たちのビジネスの現場でも、時には冷え切った人間関係や、一筋縄ではいかない難しい交渉に直面することがあります。そんな時、強引にこちらの都合ばかりを通そうとすれば、相手の心はさらに固く閉ざされてしまうかもしれません。自然界が春の陽気で花を咲かせるように、まずは自分たちから相手を思いやる温かな光を投げかけることが大切だと思うのです。
江戸時代の思想家である石田梅岩は、「実(まこと)の商人は、先も立(たち)、我も立つことを思うなり」という言葉をのこしました 。これは、「真の商人とは、相手と自分の双方が納得できるような商売をするものだ」という意味を持っています 。ピリピリとした空気の中でこそ、自分の利益だけを主張するのではなく、まずは相手の立場や思いに寄り添ってみる。その誠実な姿勢とささやかなホスピタリティが、いつしか相手の緊張を解きほぐし、共に納得できる円満な着地点へと導いてくれるのではないでしょうか。
硬いつぼみがやがて柔らかくほころぶように、一つひとつの対話を心を込めて紡いでいく。お互いを労わる思いが、凍てついた空気を溶かし、関わるすべての人と温かな笑顔を交わし合える。そんな心地よい商いをして行きたいと思います。

