第14候:鴻雁北(こうがん かえる)|4月9日頃〜
冬の間、私たちの目を楽しませてくれた雁(がん)たちが、暖かな風に誘われるように北の故郷へと帰っていく季節を迎えました。桜の季節が落ち着きを見せ、自然界では主役が交代するように、一つのサイクルが静かに閉じようとしています。
この「鴻雁北(こうがんかえる)」の情景は、自らの足でビジネスを動かす日々においても、大切な示唆を与えてくれます。日々の仕事に邁進していると、つい「あれもこれも」と抱え込みがちですが、自然界に去り際があるように、仕事にも適切な「引き際」が必要です。惰性で続けている慣習や、今の自分のあり方に合わなくなったサービスを整理することは、決して退歩ではありません。雁たちが北へ帰るのが生命を繋ぐための前向きな移動であるように、次なる成長のために、手元に「余白」を作る勇気を持ちたいものです。
江戸の思想家・石田梅岩は、「実の商人は、先も立ち、我も立つことを思うなり」と説きました。これは自分自身の利益だけを追うのではなく、相手も自分も共に立ちゆく「共存共栄」の姿を指しています。 一つの企画を終えたり、役割を整理したりする際、この「先義後利(義を先にして利を後にする)」の精神が根底にあれば、それは単なる終了ではなく、信頼という名の目に見えない資産を積み上げる行為に変わります。目先の数字に惑わされず、正直に、そして実直に目の前の仕事に向き合うこと。その積み重ねこそが、雁が再び冬に巡ってくるように、良き縁を自らの元へと連れ戻してくれる原動力になります。
去りゆくものに感謝を込め、今ある資源を「始末」よく活かしきること。そんな日々の地道な積み重ねを、一つひとつ丁寧に大切にしていきたいですね。

