第12候:春分末候/雷乃発声(かみなりすなわちこえをだす)|3月31日〜4月4日頃
春の気配がいっそう濃くなり、遠くの空で微かな雷鳴が響き始める頃を「雷乃発声(かみなりすなわちこえをだす)」と呼びます。冬の間、地中で静かに眠っていた生き物たちが、この音に驚いて目を覚ますといわれる「虫出しの雷」の季節です。激しい嵐の前触れではなく、大地に活気をもたらし、恵みの雨を予感させる、生命のスイッチを入れるような瑞々しい響きです。
この自然の営みは、私たちのビジネスにも大切な示唆を与えてくれます。新しい企画を立ち上げたり、チームで新年度の目標を共有したりする際、私たちはつい「目に見える大きな成果」ばかりを急いで求めてしまいがちです。しかし、春の雷が地中の命を優しく揺り起こすように、まずは現場の仲間や大切なお客さまの心に届く「小さな共鳴」を丁寧に生み出すことから全ては始まります。
石田梅岩は、商いの絶対的な倫理として「正直」を最も重視しました 。相手を欺かず誠実であることこそが、信頼という強固な土台を築くのです 。また、梅岩は「まことの商人は、先も立ち、我も立つことを思うなり」と説きました 。これは自分だけでなく、取引相手や社会全体が共に利益を得られるように配慮する共存共栄の精神です 。さらに、手元にある資源を大切に活かしきる「倹約(始末)」の心は、単なるケチではなく、目の前の仕事に真摯に向き合う知恵でもあります 。
新しい季節の始まりに、私たち自身の「志」という雷鳴を響かせ、仲間と共に心地よい汗を流せる日々でありたいものです。

