第16候:葭始生(あし はじめて しょうず)|4月19日頃〜
水辺の景色が、少しずつ淡い緑色に染まり始める季節となりました。冬の間は枯れ色だった葦(あし)が、水底から力強く芽を出す「葭始生(あしはじめてしょうず)」の時期です。春の光を浴びてスッと伸びる若芽の姿は、これから始まる生命の勢いを感じさせてくれます。
この情景をビジネスの現場に重ねてみると、新しい企画がようやく形になり始めたり、地道に取り組んできたことが少しずつ周囲に認知されたりする、そんな「芽吹きの瞬間」に似ています。ここで大切なのは、地上に見えている芽の勢い以上に、それを支える水底の「根」がいかにしっかり張っているか、という視点です。
石田梅岩の教えの中に、物事の根本を大切にする姿勢があります。ビジネスにおいて、目に見える売上や成果は「枝葉」であり、それを支える「根」にあたるのが、誠実な心や日々の実直な努力です。梅岩は、商売の利益を「正直」の対価として捉え、自利(自分の利益)だけでなく他利(相手の利益)を同時に追求する「三方よし」の重要性を説きました。 新しい試みが芽を出す時期こそ、目先の数字を急ぐ「甘き毒」に注意し、まずは相手に対して正直であるか、提供する価値に偽りはないかという原点に立ち返る。こうした「先義後利」の姿勢が、厳しい季節にも揺るがない強い根っこを育てます。
派手な成長を追い求めるのではなく、まずは足元の土壌を整え、内側にある誠実さを一つひとつの実務に込めていく。そうした丁寧な積み重ねを、今日という一日から大切にしていきたいですね。

